今すぐ宴会

今やただ漫然とお店を開けているだけではお客さまに来ていただけない時代へと確実にも、年々、少子化傾向が顕著になっています。

私たちサービス産業にも大きなダメージを与える、人口の減少がやがて起ころうとしています。 もはや時代は、互いに切瑳琢磨し合った競合の時代から過酷な競争の時代へと突入し、これからは激しいパイの奪い合いとなるでしょう。
そして、いずれは淘汰の時代を迎えるはずです。 それには、サービス産業に携わる私たちが今後の明確な方向性として、質をいかに高めていくかということが最重要課題になります。
今や利用されるお客さまには多くの選択肢がありますから、質の向上を図らなければ、お客さまの支持を得られません。 提供されるお料理や飲み物、そしてサービス、清潔で衛生的な環境、これらの質の向上。
また正社員はもとより、パート・アルバイトであっても、教育・訓練を通じて自らの質の向上を図らなければなりません。 質の向上には、今ここでもう一度、物事の本質・原点・基本を見直すことが必要です。
本質・原点・基本の見直しといっても、必ずしも難しいことをするわけではありません。 まず、当たり前のことを当たり前にできるようにすることです。
例えば、同じ職場、店舗で働く仲間同士の気持ちよい挨拶。 朝、出勤・出社したら、自ら「おはようございます。
今日も一日よろしくお願いします」、また、人から何かしていただいたら、上下の隔てなく「どうもありがとう」「ありがとうございます」、そして、退社するときはお互いの一日の労をねぎらう意味で「お疲れさまでした。 また、あしたもよろしくお願いいたします」と声をかけ合える環境になっていますか。
今、私の心配は、身近に働く仲間同士、挨拶ひとつきちんとできないことです。 身近に働く仲間同士でできなくて、どうしてお客さまに本当の意味での挨拶ができるでしょうか。
身近な人にさえできない挨拶が、お客さまにできるはずはありません。 また、サービス産業に携わっているにもかかわらず、髪の毛の長い人、つめの汚い人、汚れた靴を履いた人など、だらしない格好をした人をよく見かけます。
自分の身だしなみひとつきれいにできない人が、どうして取り扱うお料理を衛生的に提供できてはいないでしょうか。 さて、広い意味でのサービス産業といわれる私たちの仕事が、そしてサービスという世界が、これから大変重要な時代を迎える中で、どれだけの人がサービスの原点を理解し、また、サービスの基本を身につけているでしょうか。
これからはただ表面的にサービス、サービスといってもなかなか通用しません。 私はよく外食産業に携わる人に、こういう質問をします。

「あなたのお店の商品はなんですか」と。 また、すると、ほとんどの場合、「おいしいハンバーガーです」「手づくりのピザです」、あるいは「ステーキです」といった答えが返ってきます。
しかし、そもそも商品とはなんなのでしょうか。 それは、提供されるお料理やこれらは、皆、当たり前のことを当たり前にするという、物事の本質・原点・基本サービスを商品として確立する自分が働く店舗を清潔に整えることができるでしょうか。
いずれも難しいことです。 例えば、「業態にかかわらずお料理のおいしいお店を5店挙げてください」と質問されれば、即座に答えが出てくるでしょう。
しかし、「抜群のサービスを提供するお店は?」と尋ねられたら、なかなか思い浮かばないのではありませんか。 このように、今まではサービスをきちんと商品として確立できた企業や店舗は、あまりありませんでした。
それだけに、競争が激化し、質の向上が求められる現在、サービスを問い、一つの商品として確立することこそが、差別化の大きなポイントとなるのです。 このことは、外食産業に限らず他のサービス産業でも同様です。

日本における宅配ピザのパイオニアであるDでは、「プロダクト・サティスフアクション・ギャランティ」という制度を実施しています。 これはいかなる理由であれ、お客さまが商品やサービスに対してご満足いただけなかった場合には、商品代金の返金もしくは、商品のお取り替えをもって対応する保証制度のことです。
この保証制度の特筆すべき点は、商品の品質のみならず、スタッフのサービスに対しても保証をしている点です。 この制度を実施することにより、スタッフが責任とプライドを持ち、サービスも重要な商品の一つであると認識するようになったそうです。
つい見落とされがちですが、サービスも立派な商品、重要な商品の一つなのです。 そして、外食産業が新たなる曲がり角を迎えた現在、このサービスを一つの商品として確立できた企業こそが、お客さまの心をつかみ、これからの時代を勝ち残れるのです。
商品の返品を認めている企業は多いと思いますが、これまでは商品の付属のように考えられていたサービスも立派な商品であることをスタッフに知らしめた好例だと思います。 これまでサービスの重要性について述べてきましたが、サービスとは実に幅広く奥深いものです。
逆に言えば、そこに私たちの仕事のだいご味があるともいえるのです。 私はサービスをおおよそ2つに分けて考えています。
一つは物質的・技術的なサービス、そしてもう一つは精神的なサービスです。 では、具体的に物質的なサービスとは何でしょう。
店舗の内装・外装、家具、調度品、提供されるお料理や飲み物、そして什器・備品、あるいは照明、空調、音響。 これらはすべて物質的なサービスで、いずれもお金で解決できるものです。
次に技術的サービスとは何でしょうか。 それは、オーダーの取り方、お水の注ぎ方、お皿の持ち方、テーブルセッティングの仕方、キッチンの世界であれば包丁の使い方、フライパンの振り方、お料理の盛り付け方などです。
これらに共通しているのは、適切な指導や訓練さえあれば、時間が自然と解決してくれることです。 最初は慣れないかもしれませんが、一カ月、半年、一年と時間が経過すれば、技術は向上するものです。

それに対して、お金でも、時間でも解決できないもの、しかも、個人個人の意識によるところが大きいもの、それが精神的なサービスです。 例えば、メニューを手渡すときに相手が見やすいように渡したり、おしぼりを広げて渡す。
たばこを吸うお客さまがいらしたら、灰皿を使いやすい位置に置き直す。 雨の日にお客さまをお送りするとき、タクシー乗り場まで傘を差してお送りする。
まさに、ちょっとした思いやり、心遣いのあるサービスです。 こんな粋な心配りの例もあります。
石川県金沢市にある、130年の歴史を持つ料亭旅館・Aは、町の真ん中にある旅館ですが、お客さまに少しでも風情、涼感を味わっていただくために、夏から秋にかけては、女将の知り合いの方が毎年持ってきてくださる鈴虫を虫かごに入れ、館最初、お客さまは虫の音の録音テープだと思っていたようですが、本物の鈴虫が42各所に置いてあります。 いているのを見てびっくりされたようです。
老舗旅館のお客さまへの心配です。 こうしたことこそ、皆さんが持っているホスピタリティによって生まれる温かいサービスです。

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